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BORN TO BE BEAR

2023

この度はお越し頂きまして誠に有難うございます。

今回はこれまで福島滉平が展開してきましたシリーズ作品を

中心に展示しております。

スクロールの順に沿ってお進み頂くと

これまでの作品の流れがわかりやすくご覧いただけます。

 

まずは本を手に取り想像を膨らませるように、作品を眺めてからゆっくりと読み進めてみてください。

 

>>Diagram series 

僕の作家人生において、日本の象徴たる美意識、侘び寂びの美意識は必然的なものである。

“侘び"と"錆び"にそれぞれが独立した意味を持ち、日本人なら大抵"曖昧なそれ"を幼少期から体感してきたはずだ。

わびとは物事面における不足や欠如、欠乏、不自由を肯定し、簡素で静寂を楽しむ。

すなわち場所や道具に左右されぬ精神的なものを重視する考え。

さびは古くなる、色あせる、錆びる。という時間の流れによる劣化や生命力がなくなっていく様子を表し、その錆びゆく心さえ美と捉える考えである。

つまりは、静寂な中に奥深いものや豊かなものがおのずと感じられる美しさをいう。

そしてその美意識を建築から学んだ僕にとっては、日本における『間』という捉え方も、芸術家である前から重要視していました。

次元の壁をも超えたこれらの具現性の無い奥ゆかしさをあえて言葉で表現するならば、物質や言葉に依存する事のない『無音の芸術』である。

宇宙という漢字がそれぞれが空間と時間の意味を持つように、『間』の概念にもそれに共通するものがある。

実態がなく、それ故に捉えづらいものでありながら、さらには複数の意味を持つ。空間、間隔、余白、隙間、余韻、空白、時間。

具現性のないこの感覚を表現するには、時に無意味という意味すらも肯定した美しく静止する絵であればいい。

芸術が必ずしも主役である必要はなく、意図的な理解を排除することこそが芸術の真の解放と考え、これをWabisabismと提唱します。

*​日本独特の『侘び寂び』を図形・余白・色・バランスを用いて表現し、独自の解釈をWabisabismと提唱したこの作品は、建築分野における図面を描く際の下書き(ダイアグラム)が基となっている。また、どの方向から見ても作品が成り立つことから展示の向きを定めないように背面には直接サインを記入せずタグが付けられている。鑑賞者には見えない部分だが、これ以降天地を定めていない作品では同じ方法が使用されている。

*Diagram seriesでは龍安寺の枯山水からインスピレーションを受けている。

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>>Anagram series 

◇アナグラムとは言葉遊びの一種だが、表向き無意味な羅列に別の解釈が与えられているという意味では、まさに自身の考える芸術の意義に近い。

物質に依存せず図形と配色のコンポジションのみで構成されたDiagram series に対して、具象を描き原色を主に用いているが、表現において本質はさほど変わらない。

僕のアイディアやアイデンティティ、モラルやルール、オリジナリティやインスピレーションに、いちいち意味を問うことがもどかしくて仕方ない。

僕は僕自身を言語化する事を放棄し、それを一枚の絵画として納めた。

これはあなたとの物語の出会いでもあり、目に写る一瞬の興味を手に取り、内容を想像しながらページをめくるその行為こそ、僕の芸術家としてのロマンである。

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*図形のみで構成されたDiagram seriesとは対比的に物質に依存して表現したAnagram series。画面いっぱいに埋め尽くされた”実体”は、一体何を描いているのだろうか?芸術に限らず日常的に興味や疑問を持つことへの重要性を訴えた。

​*このシリーズ以降、具象と抽象表現の中間を模索し始める。

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>>Topogram series 

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◇見えないものが大半の世界故、私達は目に映る物すべてに理解を求める。

しかし芸術に置いて最も重要視すべきは、何が見えるかより何を感じるかではないだろうか。

*Anagram seriesとは対比的に物質から離れ、色の構成のみで表現した。

色は温度や感情を想像させることができる。それは人間独自の感覚でもある。

*Topogramとは医学分野における脳の状態を測定するトポグラフィーによる造語で『Rendez-vous』は実際に男女を映したトポグラフィーを用いて描かれている。

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>>Engram series 

◇作家の生まれ育った環境やこれまでの作品。着想から完成に至るまでの時間。

 

絵画とは時間を閉じ込める1つの手段なのかもしれない。

 

日々変化する感情や価値観を新鮮な状態で記録し蓄積していくために、区画化された画面を1日1マス埋めていくという試みから始まったのがEngram seriesです。

 

繰り返す事で紡がれていく痕跡に日々を想い重ね、毎日朝が来るというそんなありふれた奇跡と、自分が歩んできた軌跡を振り返るきっかけになれば良いなと思っています。

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>>Biogram series 

◇古代の日本では草木、動物、人間、無生物、人工物など全てに超自然的な源から生命が宿るとされている。

​この作品はその思想により生まれたキャラクター達を画面いっぱいに寄せ集めた僕の心のバイオグラフィーでもあり、Anagram seriesで表現したかった具象と抽象の間をまた異なる形で表現しました。

​*異なるものを掛け合わせ空想のキャラクター(生物)を描いたこの作品は、幼少期から今に至るまでの無意識的な記憶を呼び覚まし自分の心のバイオグラフィー(世界観)を表現した。

​無邪気でおもちゃのような見た目は、子供のまま時が止まっているようにも感じられる。大人になるにつれて忘れかけてしまうとても大切なことを教えてくれているようで他ならない。

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◇これまで多岐に渡り展開してきたDiagramから始まり、Anagram,Topogram,Engram,Biogramと続く一本の物語が崩改し生まれ変わりました。

純粋な好奇心やアイデンティティを見失う度に、僕たちは自分の存在や作品を俯瞰視することで、世界と自分の縮尺を自由に行き来してきました。

 

物事を注視し続けると全体像や意味を見失い、立場や視点が変わるゲシュタルトの基本概念は、僕にとって重要な事であり、伝えたい事のひとつでもあります。

 

これを簡潔に説明するならば、それ自体が完全な全体像であり、気づきの欠落した空虚な現代人に命を吹き込むおまじないのようなものです。

 

これらは表面に現れるものが最も重要で、無意識下まで掘り下げる必要は大してありません。

 

人は方法にこだわるあまり、純粋な動機や興味を見失いがちですが、自身のカルマの構造を理解すれば、自虐や消耗戦ばかりの人生の脚本を再編することも可能です。

 

難しく考える必要はなく、この心地の良い違和感に乗せて、カタチという概念がどういうものか自由に感じ取ってみてください。

*平面に備わる空間の奥行きや直列構造を曖昧にすることで、別の視点や可能性を生み出し、鑑賞者のゲシュタルトを崩壊させるこの表現方法をシリアリズムと名付けた。

*一つのもの(こと)に注視すると全体を見失い、それらを別の視点から見ると新しい表情や発見があるというこのゲシュタルトの心理学は、画家にとって重要なことであり、それが作品に込められた想いそのものである。

​*ゲシュタルトとは「形・全体・統合」を意味しており、ゲシュタルト療法は、意識に上っていない自分の部分に気づき、それを自分に統合していくことが柔軟にできるようになることを目指します。 精神分析的ではなく、実存的、人間主義的なアプローチをとります。(googleより引用)

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無限協奏曲  Acryl on canvas  F50 1167×910

 

芸術は崇高であると同じく平等なものであり、常に作品と作家、他者との間に共存している。

 

作品は僕と他者と壁を次第に取り除き、次第に鑑賞者の持つリズムやうねりと調和するための協奏曲のようなものです。

 

両者の対比と調和を構成原理としつつ、多かれ少なかれ各々の個性によって生み出されるリアルで幻想的な夢を表現しました。

*協奏曲とは、単数または複数の独奏楽器とオーケストラからなり,両者の対比と調和を構成原理としつつ,

多かれ少なかれ独奏者の演奏技巧を発揮させるように作られた楽曲。

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